身体拘束とは?3要件と4つのタイプをクイズで解説

「身体拘束なんて、うちではしていません」。障害福祉の現場でよく聞く言葉です。ところが実際には、良かれと思ってやっている支援が身体拘束にあたっていたというケースが少なくありません。しかも身体拘束の適正化を怠ると、拘束をしていない事業所でも減算の対象になります。本シリーズ(全3回)では、法定研修のテーマである虐待防止と身体拘束を、現場目線でやさしく解説します。第1回は「身体拘束とは」です。

1クイズ1・この3つ、どれが身体拘束か

まずは頭の体操から。難しく考えず、直感で選んでみてください。

次のうち「身体拘束」にあたるのはどれでしょうか

複数選んでもかまいません

A

車椅子から立てないようベルトで固定する

B

出ていかないよう居室の扉に外から施錠する

C

興奮を抑えるため薬を多めに飲んでもらう

こたえ

A・B・C、すべてが身体拘束です

Aは典型的な拘束、Bは本人の意思で出られない状態をつくる行動の制限、そしてCも立派な身体拘束です。落ち着かせる目的の過剰な投薬はドラッグロックと呼ばれ、拘束にあたります。

ポイントは「道具を使ったかどうか」ではありません。本人の自由な動きを、本人の意思に反して止めていないか。ここが判断の分かれ目です。

2身体拘束の定義と、道具を使わない拘束

身体拘束とは、本人の身体を縛ったり、動きを制限したりすることです。縄やベルトなどの道具を使わなくても該当し得る、という点が重要です。とくに次の3つは見落とされがちです。

スピーチロック

「動かないで」「座っていて」と言葉で長時間動きを封じるもの。道具を一切使わないため、拘束だという自覚が持ちにくいのが特徴です。

ドラッグロック

職員側の都合で落ち着かせるために、必要以上に向精神薬などを飲んでもらうもの。医師の指示に基づく必要な服薬とは区別されます。

見張り

出られないよう個室に留め置く、常時監視するといった対応も、行動の制限になり得ます。安全確保のつもりが拘束になっていないか確認しましょう。

身体拘束は、障害者虐待の5つの類型のうち身体的虐待の一形態です。つまり「拘束していないから虐待とは無関係」ではなく、拘束の適正化そのものが虐待防止の一部になります。

3「良かれと思って」が拘束になる4つのタイプ

身体拘束は、大きく4つのタイプに分けられます。とくに3番目と4番目は見落としがちです。

物理的に固定する車椅子やベッドにベルトなどで固定する。居室に外から施錠して出られなくする。
道具で動きを封じる手指を使えないミトン型の手袋をはめる。自分では脱げないつなぎ服を着せる。
薬で動きを抑える落ち着かせる目的で、必要以上に向精神薬などを飲んでもらう。クイズのCがこれにあたります。
見落としがちな例「危ないから」と机で囲って立てなくする。見張る目的で個室に留め置く。

注意虐待や拘束は、特別に「ひどい人」が起こすものではありません。むしろやさしい人が、本人のためを思って起こしてしまうところに怖さがあります。だからこそ、知ることがそのまま予防になります。

4クイズ2・例外的に許されるのはどんなときか

とはいえ、現場では判断に迷う場面もあります。身体拘束が例外的に認められる条件を、クイズで確認しましょう。

身体拘束が「例外的に許される」のは、どんなときでしょうか

正しいと思うものをいくつでも

A

命や身体に危険が迫っているとき

B

必要な最短時間に限るとき

C

家族が「してよい」と同意したとき

D

他に代わる方法がないとき

こたえ

正解はA・B・Dの3つです

この3つが、いわゆる身体拘束の3要件です。AだけやBだけを満たしていても不十分で、3つすべてを満たしたときにはじめて例外として検討できます。

注意Cの「家族の同意」は誤りです。ご本人やご家族の同意があっても、原則として身体拘束は認められません。同意書があるから大丈夫、という運用になっていないか確認しましょう。

53要件(切迫性・非代替性・一時性)を詳しく

3要件は、言葉だけを覚えても現場では使えません。あてはまる例とあてはまらない例をセットで押さえるのがおすすめです。

要件意味あてはまる例あてはまらない例
切迫性 生命や身体が危険にさらされる可能性が著しく高い 裸足で車道に飛び出そうとしている 「転ぶかもしれない」という漠然とした不安だけ
非代替性 身体拘束以外に、代わりとなる方法がない 声かけ、見守り、環境調整をすべて試したうえで 人手が足りないから、とりあえず拘束する
一時性 身体拘束が必要とされる、最も短い時間に限る 危険が去ったらすぐに解除する 念のため、ずっと続ける。常態化させる

身体拘束の3要件。「著しく高い」の判断に迷ったら、誰が見てもそう思う状況かどうかを基準に考えます。

そして、3要件を満たしていればそれで終わりではありません。なぜ必要かを組織で検討し、記録に残してはじめて、適正な身体拘束として認められます。

3要件をすべて満たす そのうえで 検討して記録する はじめて 適正な拘束

要件を満たすことと、手続きを踏むことはセットです。

6やむを得ず拘束する場合に必要な4つの手続き

やむを得ず身体拘束を行うのは、たとえば次のような場面です。いずれも一時的な対応であることが前提になります。

自傷や他害の危険が切迫

自分の頭を強く打ちつける、他の利用者に危害を加えようとするなど、放置すれば生命や身体に重大な危険がある場面で、一時的に制止する。

転倒や転落の重大リスク

医療上の必要から、他に代替手段がなく、短い時間に限ってベッド周りの安全を確保する。漫然と続けることはできません。

危険からの一時的な誘導

裸足で車道へ飛び出そうとする際に、安全な場所へ導くため、必要な最短時間だけ身体を支える。

どのケースでも、次の4つを必ずセットで行います。

  • 委員会等で組織的に検討する。担当者一人の判断で行わない
  • 態様、時間、理由、利用者の心身の状況を記録する。対応して終わりにしない
  • ご本人とご家族に説明する
  • できる限り早く解除し、常態化させない

ハードルが高いと感じるかもしれませんが、まずは知識として入れておくことが第一歩です。知っていれば、現場で判断に迷ったときに立ち止まれます。

次回・第2回は、身体拘束を含む障害者虐待の全体像を、厚生労働省の全国データをもとに解説します。どこで、誰による虐待が多いのか。5つの類型とは何か。数字で見ると、決して他人事ではないことがわかります。

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