【処遇改善加算・第3回】キャリアパス要件とは?昇給のしくみと取り逃し防止

第3回は、キャリアパス要件の後半要件3(昇給のしくみ)・要件4(改善後の賃金額)・要件5(福祉専門職員配置等加算)を解説します。とくに要件4・5は「うちには無理」と思われがちですが、免除規定や取りやすい加算があり、多くの事業所が上位区分をねらえます。

1要件3・昇給のしくみとは(3つのタイプ)

要件3は、福祉・介護職員について次のいずれかの昇給のしくみを整備することです。これも書面で整備し、全職員に周知するまでが要件です。

  • タイプA 経験に応じて昇給するしくみ
  • タイプB 資格等に応じて昇給するしくみ
  • タイプC 一定の基準に基づき定期に昇給を判定するしくみ
タイプ
内容
向いている事業所
A 経験
勤続年数・経験に応じて昇給する
年功をベースにしたい
B 資格
資格を活かした役割の広がりで昇給する
専門職を伸ばしたい
C 基準
評価基準で定期的に判定して昇給する
評価制度を整えたい

注意要件1から3は「書面で整備し、全職員に周知」まで必要です。運営指導では周知の証拠を求められます。

2昇給のしくみが「ない」と「ある」で何が変わるか

昇給のしくみは、単なる要件ではなく「人が育ち、辞めない組織」をつくる土台です。あるかないかで、現場は大きく変わります。

しくみが「ない」と

  • 頑張る人ほど疲弊し、誰でも同じ扱いになる
  • 仕事が属人化し、その人の離職リスクが高まる
  • 好き嫌いや声の大きさで評価が決まりがち
  • 成長の方向が見えず、受け身・待ちになる

しくみが「ある」と

  • 大事にする価値観が組織に浸透する
  • 次の一歩が見え、自分で動く人材が育つ
  • 基準に沿って面談が建設的になる
  • 役割と期待が明確になり、拡大の基盤になる

3昇給のつくり方1・経験と資格で上げる

経験に応じて昇給する(タイプA)

1年ごとに評価し、結果に応じて昇給額を決めるのが基本です。例えば「期待どおりならプラス2000円、期待を超えたらプラス3000円、大きく超えたらプラス5000円」のように段階を決めます。基本給を上げる方法と、賞与で評価する方法があります。

資格等に応じて昇給する(タイプB)

「資格手当を一律で払う」だけではもったいない例です。資格を活かして役割が広がるほど上がるキャリアパスにすると効果的です。看護師の例で見てみましょう。

初級一般的な看護業務

利用者の健康管理、病院受診の同行、服薬管理など

月1万円

中級役割を広げる

職員への看護研修、感染防止委員会の担当・推進

上乗せ

上級連携・成果

病院との連携・信頼関係づくり、利用者紹介の獲得

月2万円(紹介の件数でさらに上乗せ)

看護師にかぎらず、精神保健福祉士などの資格でも同じ考え方でキャリアパスを作れます。「ここまでやればこうなる」を見せることが、やる気につながります。

4昇給のつくり方2・評価基準で定期に判定する

タイプCは、評価基準を作り、定期的に判定して昇給を決めるしくみです。評価項目は事業所ごとに決められます。例えば次のような項目です。

  • 勤務態度・基本姿勢(遅刻や報連相、前向きな言動など)
  • 利用者支援力(個別支援の理解と実践、信頼関係の構築)
  • 業務遂行能力・自主性
  • チームワーク・協調性・自己研鑽

点数化して総合評価を出し、評価に応じて昇給します。毎年続けると、しっかりした職員ほど着実に上がり、辞めづらくなります。

S評価
プラス5000円
A評価
プラス3000円
B評価
プラス1000円
C評価
現状維持

評価と昇給額の対応イメージ(金額は事業所ごとに設定できます)。3年続ければ基本給が着実に積み上がります。

昇給は手当や賞与でもよいとされていますが、国は「基本給での賃金改善」が望ましいと考えています(第4回の月額賃金改善要件にもつながります)。

5要件4・改善後の賃金額(440万円と免除規定)

要件4は、経験・技能のある福祉・介護人材のうち1人以上の賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること。「そんな高い人は作れない」と、ここで加算3にとどまる事業所が少なくありませんでした。

注意金額の水準は改定で変わることがあります(令和8年度から引き上げられた可能性があります)。最新の要件は必ず告示・ハンドブック等でご確認ください。

しかし要件をよく読むと、小規模事業所等で加算額全体が少額の場合は、この要件の適用が免除されます。小規模なグループホームの多くはこれに該当します。

440万円の要件 でも 小規模は免除 なので 実質クリア

該当する場合はチェックすればクリア扱いになります。加算3にとどまっている事業所は、ぜひ加算2への引き上げを検討してください。

6要件5・福祉専門職員配置等加算(取り逃し注意)

要件5は、福祉専門職員配置等加算(1から3のいずれか)を届け出ている事業所であればクリアで、加算1をねらえます。

とくに「福祉専門職員配置等加算3」は、勤続3年以上の職員の割合などで取得でき、有資格者がいなくても取れることがあります。3年以上たった事業所で取り逃しが多い加算なので、一度見直してみてください。

  • 福祉専門職員配置等加算(1・2・3のいずれか)を届け出ているか
  • とくに「3」は勤続年数などの要件で取れないか
  • 取れれば要件5クリア、そして加算1へ

次回・第4回は、毎月の支払いに関わる月額賃金改善要件と法定福利費を解説します。